土曜日, 1月 13, 2007

2chドメイン差し押さえの件


2chのドメインが差し押さえられるという情報がZAKZAKから流れ丸1日たち、大分情報も安定してきたのでうちのブログでもこの問題について取り上げます

さて、2chで叩かれた35歳の会社員の訴えに対し、1日に付き5万円の懲罰金を掛けられているにもかかわらずひろゆき氏は100日間放置したため、同会社員はひろゆき氏に対し500万円の債権をもっているということになり、それを武器にひろゆき氏の全財産差し押さえに出た。
ここ最近毎日新聞が「ネット君臨」という大規模な連載で2chユーザーの言動を批判している。(もちろん、新聞や放送などの既得権益を持つマスメディアにとってただ同然の新マスメディアである2chなどの存在は脅威であり,それに対して批判的な論調になる傾向はある)
さて、僕はこのような論争が起きること自体が不思議に思う。
たとえば、世の中には問題を起こす加害者がいて、被害者がいる。そして、それらを統治、管理し治安を維持する国家がある。
そして、被害者に損害が合った場合、加害者にそれを訴え出るのが標準である。世の中のシステム管理者である国家に訴え出、国家に賠償を請求するものではない。問題を起こした加害者に罰を下すべきである。

ところが、インターネットを通じて問題が起きたとき、その多くはシステム管理者が責任を負わされる。過去の2ch関連の訴訟や,Winnyにまつわる事件がそうである。(もっとも、「加害者」を訴追しにくくするWinnyの匿名性は違法行為を意図的に助長したと考えられるが)
つまり、「国家」が責任を負わされ、賠償責任まで発生するのである。
あくまでも国家は警察や軍隊を整備し国民が自由に活動できる環境を整備しただけで、そこで生じたいじめなどのトラブルは国民同士で解決してもらわなければならない。
同様に掲示板などもWebブラウザから送信したデータを直接表示できる領域に書き込むことで、複数の人間が連絡を取り合う環境を整備している。その「連絡を取り合う」過程で発生したトラブルに何故システム管理者が金銭的な賠償責任まで負わされなければならないのだろうか?

それでは、パブリックに情報を共有できるWebアプリケーションを開発する、と言うだけでも複雑な責任問題が絡んでくることになりはしないか?もし、自サーバのディレクトリのどこかにパブリックな情報交換が可能なCGIを配置し、本人は別の作業に集中し長年放っておいたとする。ところが偶然そのファイルにアクセスが集中し,いつのまにか有名な掲示板となり,そこに仮想社会が構築されそこでプライバシーの侵害等の問題が起こったら本人は責任をとらなければならないのだろうか?自分はWebブラウザからHTTPサーバに書き込めるプログラムを作っただけである。
これらについては後の法整備で通信業界にさまざまな制約がかかり,僕の考えは完全に時代遅れも甚だしいもの(すでにそうであるが)になるのかもしれない。しかし、これが2ちゃんねるともなると話は極端である。

2chは国民の1割近くである、老若男女問わない1000万人に日常的に利用され、そこでコミュニケーションを取り合い,その生活・・人によっては仕事・収入にも密接に影響をあたえている。
2chの文化は国民に大きな影響を与え,全国のあちこちでその影響を見ることができる。うちの中学校でもそうである。また、多くのニートが2chを利用し、人生の機軸としている。もちろんその他にも沢山の国民は2chの与えてくれるエンターテイメントや豊富な情報に大きな価値を認めており,公共の福祉としてそれらが明日を生きる活気となっているわけだ。
何故,そこまで2chは人々にとって素晴らしいエンターテイメントであり、且つ豊富な情報源、ひいてはビジネスチャンスともなり得るかというと、その参加人数の多さに理由はあるであろう。いまや2chは非常に規模が大きいにもかかわらず,類似のマイナーな掲示板群にくらべ圧倒的にその活気は非常に盛んで,ひとつの社会を形成している。そして、2chのあちこちではさまざまな活動がなされており,例えば,過大なサーバーの負荷が2chの経営を危うくした時に、UNIX板の一部住人がより効率的な新しいアルゴリズムを開発し、システムを救った話は有名である。

このように、ある種公共機関のように国民生活に密接に関わってきている2ちゃんねるを、500万円の債権を理由にドメインなどを接収し,事実上破壊しようとするのはいかがなものか。
仮に、ドメイン接収後2chが復活したとしても、以前の輝きを取り戻すことは非常に難しいであろう。
もちろん、マスコミはそういった主張に賛同し,良心的な動きとして支持するだろう。しかし、その裏には2chが営業の障害になっていると言う彼等業界の実情を理解しなければならない。更に,革新(理想主義)的な論調で国民のメジャーな存在になった多くのマスコミにくらべ、やや2chには保守的な論調が目立つので,そういった意味でも2chは目の仇にされやすいのであろう。
しかし、それは2chが「ひねくれて」いて「教育上悪い」のではなくて「現在日本のスタンダードであるイデオロギーにそぐわない」という点が重要であり、一部保守派論壇が2chに注目するのも、イデオロギー(理想主義)的なこれまでのマスメディアと異なる点が目を引いたのであろう。
そもそも国民生活に強い影響を与え(公共の福祉)、事実上莫大な経済価値のある2ちゃんねるを、500万円の債権を理由にその存在価値を無くすような主張がまかり通ってはならない。ましてや、日本で大きな力を持つ団体が、そのイデオロギーやエゴイズムに左右され(本人たちはそれを否定するであろうが、その主張そのものが「主義(イズム)」であると認めなければならない)「正義」を冠して強く後押しし,それがまかり通るような雰囲気を、彼等が強い発言力(そもそも「発言」がマスメディアの仕事なのだが)をもっている社会の中で画一的に教育された国民の間に広めるなどはもってのほかである。

4 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

>あくまでも国家は警察や軍隊を整備し国民が自由に活動できる環境を整備しただけで、そこで生じたいじめなどのトラブルは国民同士で解決してもらわなければならない。

まず、「国家」を例えに使うと「内政干渉」とかのロジックも出てきてしまうので、あまりうまくないと思う。

できるだけ身近な例で言うなら、どこかの児童公園で事故があって怪我した子どもがいたとして、公園の管理者に管理責任を問うのは、(もちろん怪我の経緯にもよるが)そんなに飛躍した論理展開ではないよね?

今回の件だと、トラブルを解決する為の協力さえも「取り締まるのは無理」の一点張りで怠ってきてる以上、「トラブルを幇助している」という主張をされる可能性すらあると思うが。

>パブリックに情報を共有できるWebアプリケーションを開発する、と言うだけでも複雑な責任問題が絡んでくることになりはしないか?
つWinnyと金子勇

>国民生活に強い影響を与え(公共の福祉)、事実上莫大な経済価値のある2ちゃんねるを、
・どんな「強い影響」よ? チーム世耕とか?
・影響があるから「福祉」という考え方がよく分からない。たとえばTV放送は「福祉」なの?
・経済価値があるってのは牽強付会じゃない? ネガティブキャンペーンに使われた場合に被害の回復が難しい、という点で「マイナスの経済効果が働く」という主張なら理解できるんですが

鼻炎 さんのコメント...

有難う御座います。
ご指摘の通りだと思います。

匿名 さんのコメント...

>500万円の債権を理由にドメインなどを接収し,事実上破壊しようとするのはいかがなものか
>500万円の債権を理由にその存在価値を無くすような主張がまかり通ってはならない

500万円の債権とドメインを結びつけるのは事実上ひろゆき氏本人の選択に委ねられている事を忘れてはなりません。ですから結局法的には、「影響の大きさを理由に500万円の債権の差し押さえを妨げてはいけない」という理屈の方が勝ってしまうのです。要するに差押えられたくなければ法律に従えばよい、というだけのことです。鑑みに、民事執行法では債務者の生活を破壊するような差し押さえは禁止されていますし、利害関係者は異議申立もできます。しかし、ひろゆき氏の経済状態を見るに、悪意を持って支払い可能な債務を踏み倒そうとしている限りドメインの差押えに対して影響の大きさなどを理由として抗弁しても認められる余地はないでしょう。同氏もそれはわかっててあえてやってるようですから、2cnらーを人質にとったようなものという見方もできますよね。

鼻炎 さんのコメント...

そうですね・・
ただ、ひろゆき氏としては、今回払ってしまうと他も全て払わなければならなくなるので払うに払えないんでしょうね・・