木曜日, 3月 01, 2007

Web2.5

以前、Web2.5についてとり上げてみたことがありました。
第一回 第二回 第三回
この連載では、「XHTML2.0、Javascript2.0によってWebクライアントはリッチなWebアプリケーションに特化し,またCSS3.0などのリリースも重なってWeb2.0のマイナーバージョンアップが訪れる」と締めくくりました。しかし、Vista発売にまぎれてMSが新戦略に急激な舵取りを始めたことで,状況は変わりつつあるのかもしれません。


以前から,MSとGoogleは対峙する存在としてあちこちで比べられ,Windowsに対して「GoogleOS」を示唆するものも出てきました。それでは、どうしてMSとGoogleは正と負のような対峙する存在として扱われるのでしょうか?
それは,両者の根本的な収益モデルの違いにあるといえるでしょう。まずMSですが、この会社は個人ユーザーに直接WindowsやOfficeを売って儲けているのではなく,儲けの大半は大口企業向け販売などのOEMリリースにあるのです。そして、WindowsやOfficeといった環境を世界のユーザーに提供するOEMベンダは儲け,そこからMSは資金を吸い上げています。
OEMベンダは必死になってWindowsなどを売り、MS(とハードウエアの基幹部分を提供するインテル)は扇子で扇ぎながらその様子を眺めているのです。
こうして、Windowsとx86CPUのマーケットシェアは伸びつづけ,「ウインテル」「悪の帝国」と呼ばれる今日にまで発展しました。(もちろん,その過程にはWin98の頃のインターネットへの戦略的投資などMSやインテル自身の努力も大きく影響しています。また,インテルは90年代以降AMDなどとの競争に一応晒されてはきました)
それに対してGoogleは、基本的に広告ベースで収益をあげています。Googleは初期は検索エンジンを提供し,そこに広告を出すスポンサーからお金を取る、通常のアフィリエイトとほとんど変わらない形式でしたが、徐々に検索エンジンから検索エンジンを中心としたWebプラットフォームに変化しつつあります。そして、Web2.0の時代においてユーザーを囲い込み(Yahoo!のようにあからさまなやり方ではないですが,APIの公開などはその一端であるといえます),より収益を高め,他社より優れたソフトウエアを開発・無料で提供し,ユーザーは無料に飛びつき,広告料をスポンサーから取る、というからくりになっています。Web広告ビジネスはリアルに儲けを上げるサイトへユーザーを誘導するという性質上、Web技術が進歩,人々のWebに接する時間が増えれば増えるほどアクセスは増えるが,「リアルに儲けを上げるサイト」の伸びは限られてくるので,そのうち業界全体がジリ貧になります。そのため,Web技術の進歩は同時にジリ貧を防ぐための囲い込みも進展させているのです。そして、多数のユーザーを十分囲い込んだYahoo!のようなサイトは自身が「リアルに儲けを上げるサイト」の性質を帯び始めています。
このように,技術の進歩と囲い込み化が同時平行的に進み,結果的に私たちはそれを「Webのプラットフォーム化」として目の当たりにしています。
プラットフォーム化したWebは、WindowsやOfficeといったローカルなソフトウエアと同じかそれ以上のユーザー体験を提供し,また生活とも密着し始めています。実際,WindowsVista発売の際も,「ユーザーにとって最近のIT業界の革新の多くはプラットフォームではなくWebが提供している」という文句がアンチの新しい武器となっていました。こうして,ソフトウエア業界においてWeb勢がローカルソフトウエアにとって脅威となるような勢力となったのです。このままでは、Web勢はWebでの新しい収益モデルをローカルの世界にも持ち込む(その"ローカル"とはほとんどWebに依存/一体化しているが)と考えられるため「GoogleOS」の噂が尽きないのでしょう。確かに、このままではウインテル型収益モデルはWeb2.0型収益モデルによってこれまでの右肩上がりの成長に変調をもたらされるかもしれません。あくまでもIT業界はサービス業であり,前提としてはユーザー体験が全てなのですから、道理にかなった推測といえるでしょう。
まあ、このままのウインテル型収益モデルではWindowsプラットフォームの影響力はスローダウンを余儀なくされると考えられます(実際,ユーザー体験の上では既に起きているでしょう)
そこで、MSが考えたのが「WindowsLive」です。WindowsLiveという挑戦は,ウインテルの収益モデルをWeb2.0的収益モデルとのハイブリッドにするということにあるでしょう。
将来的にはWen2.0型収益モデルが主流となるのかもしれませんが,MSはそれがわかっていたとしてもそのような方向に急激に舵を切るのは不可能でしょう。もし、Web2.0的な世界になるとすれば,MSはウインテルの資産ではなく,全く新しいWindowsLiveの資産で他者と争わなければいけません。これはMSの影響力を大きく引き下げる要因となるでしょう。しかし、MSの膨大な開発リソースさえあればWindowsLiveを今のWindowsほどではないにせよ圧倒的なパワーにすることは可能なはずです。しかし,今のMSはウインテル型収益モデルで回っているので,そんなことは不可能です。また、旧来の部門に入れる力を意図的に弱める(WindowsLiveに入れる力をやや増やす)こともまたMSの収益の大半を占める部門を脆弱なものにするということなので収益力減退につながります。MSは、この微妙な舵取りをゲイツ無き後にその巨体でもって成し遂げなければならないのです。もしかしたら、ゲイツ氏が財団での活動をメインにすると発表したのも,そこらへんに関係があるのかもしれません。
さて、抽象論はこのくらいにして,現在のMSが何をしているかというと,Webの世界にこれまでの自社のノウハウをもって新しいテクノロジーを次々投入しようとしています。その代表がWPF/Eでしょう。
WPF/Eは、Flash以来の各Webブラウザに対する大型なプラグインの投入となる予定です。
また、XBAPなどの旧WinFXプラットフォームに見られるように、Windowsという旧来の資産とWebの技術を.netFrameworkというバスを通じて緩やかに融合しようとしているようにも見えます。この変化は,Windows98以来のものといえるでしょう。
Webにおける最新のユーザー体験と持ちつ持たれつの関係となってしまったWindowsは、新しい理想を持ってまん前からドカンと崩せるような硬直したものではなく、トルコ風アイスのようなしぶといものになっているでしょう。

今の僕の見解としては,「Web2.5」とはこのようなMSの動きと、W3CやMozilla財団の理想が絡み合ったところに生まれると考えています。

テスト前なのに俺は何をやってるんだ(汗)

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